ラ ストラーダ「道」は横で吹く

2011.01.09 17:27:44

1954年のイタリアの映画「道」やっと全編見ました!
ニーノロータ聴きたさに。

この映画の中で「ラッパ」を吹いているのが女性のジェルソミーナであることは知っていたのですが、

この「ラッパ」が、実はロータリーに近いトランペットだったんです!かなり細管でした(笑)
日本で、吹奏楽などでもっとも普及していて「てっぱん」(朝の連ドラ)の主人公の女の子が持っているのも、ピストントランペット。

そちらと同じピストン式ではなく、右側にキーがついた、横にもつ楽器です。意外。


イタリア→「ラッパ」が横とは想像しなかったため、まずそこにびっくりしました。
ジェルソミーナは、トロンボーンも吹いていましたが
そちらも、三つキーがついていて…、スライドではなくキーで音を切り替える楽器でした。
きっとあれが普段めったに見られない、
「ヴァルヴトロンボーン」なるものではないかと?
戦前までのイタリアのオーケストラではよく使われていたという…。


2011010916560000.jpg

ザンパノに初めてトランペットを教わるジェルソミーナ。
このあと、彼女は、実家で音楽教育は一切うけていないはずで、楽器も初めてなのによく吹いていて、私はトランペットの素質を感じました(笑)が、
映画ではザンパノに
「勝手に吹くな!」
としかられ、すぐにとりあげられていました。


2011010916160000.jpg

印象的なのは、旅芸人であるザンパノとジェルソミーナの二人が、野外で食事を作って食べているシーンが何度もでてきたこと。
いわゆる飯盒炊爨(はんごうすいさん)です。
「一生懸命生きている人の姿」
の象徴のように感じました。
物語としては色々出来事があるのですが、私はここが「愛すべき人間」というのか、フェリー二監督の暖かい視線・人間にたいする基本的な称賛を感じたのです…。
二人は大抵寒空の下にいるのですが、
飯盒にスプーンを入れて食べているところは、二人が一緒に生きている温かさが伝わってきて、すごく好きなシーンです。



2011010917020000.jpg


旅先で泊めてもらった修道院の納屋にて
ジェルソミーナがザンパノに、
「石ころでも役に立つならあなたのそばにいたい」とまっすぐに愛を語り、
「私が死んだら悲しい?」
とか
「私のこと好き?」
とたずねたあと。
座ったままおもむろにトランペットを吹き出すシーン。


そこでトランペット吹いちゃうんだね。素敵だ…


またすぐにザンパノにしかられたので長くは吹いていませんでしたが(笑)、枕元にトランペットが置いてありました。


ジェルソミーナは

「トランペットがアイラブユー&寝食と共にある。他は特になにも持たない」

という究極にシンプルな生活をしているのです。スゴイ溿


ピュアで、率直な、天才肌なんですね…。



(その後ジェルソミーナはザンパノが罪を犯し、心理的外傷をうけたせいか芸人として「使い物にならなくなった」ので
ザンパノからは

トランペットと一緒に置き去りに

されましたよ……………ウグ炅ヒック)。



最後はザンパノがジェルソミーナの死をひとづたえに知り、そのときにジェルソミーナを思って倒れ付して泣きます。


ジェルソミーナはけして
「知性に富んで先進的」
とか
「美貌でモテてあたりまえ」
な姫系あるいはアッパーな勝ち組?
に属するヒロインではありませんが、


ジェルソミーナが
綱渡り芸人の芸を見ているときの表情に、芸人としての豊かな感性と才能があらわれているように思いました。自分の吹いていた曲を死んだあとに歌っている人がいる(映画ごらんください(笑))、というのも音楽家としての才能が突き抜けている証拠のような気がします。うらやましい。


以上感想メモでして、全く映画の解説にはなっておりませんので…
詳細はぜひとも、映画をごらんください