ジャン・クリストフについて

2012.05.26 1:47:19

ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』について、アランが後書きみたいなのをよせています。

このアランの文(斉藤正直、清水徹訳)に感動。

“音楽はときに、いやよくあることだが、人々がその周囲をまわっては見つめる装飾つき家具のようなものであることも私は知っている。この種のようなものなら、おもいのままに自分の持ち物にすることができるが、そうでない音楽はわれわれを捕え、どこかへ連れていってしまう。”


“いわばそぞろ歩きの音楽も、私の耳を十分に楽しませてくれるものではあるが、私はまた、バッハやヘンデルのあの偉大な歩調も理解することができる”

“音楽は、力に従って生きる命を表現するばかりでなく、精神に従って生きる命をも表現する”


と、ほかに“時間の芸術”である音楽についても言葉があってそれも読み返して暗記したいくらいです(笑)


実は“ジャン・クリストフ”を読みたくて買ったのではなく、“ベートーヴェンの生涯”を目当てに入手したもので、私の所蔵しているのは古書専門店で見つけた築摩書房、昭和三十三年発行のもの。新刊もたくさんでていますが昔の本が欲しかったのです。


ノーベル文学賞を受けているロマンロラン、フランスでは当初 芸術的価値を高く評価できないと されていたらしい。
“ジャンクリストフ”では主人公がドイツ人だし?独特な“冷静じゃない感じ”が常にふんだんな文章は当時のフランスのメインストリーム
“自分の心酔むき出しにするなんて知性派失格じゃ、あ~りませんかー?”というグループには
“いやー彼は親戚なんだけどさ”
“ロランて高校で弁当一緒に食べてたんだよ”
などと率直にツルミ自慢しくない、何かの気恥ずかしさを感じたのかもしれないなと思いました(勝手な想像ですけど笑)。


しかしロマンロランの書いたベートーヴェン大賛美な文章にはいろんな情報がもりこまれていて面白いです。
この著の中では
ベートーベンはボンで生まれてるのでドイツ出身ということになっているけど、
家はフランドルの家系であると説明。←ご祖父はベルギー出身の宮廷楽士、お父様は “無知で飲んだくれなテノール“となっていて、“彼は音楽的素質をくいものにして”など読みようによって児童虐待を思わせる表現。

しかし幼少期にいくら稼がせるためとはいえ少なくとも稼ぎになる力があると見抜いて、ひるまないでヴァイオリンやクラブザンをたたきこんだお父様?は
“無知の飲んだくれ百パーセントダメ人間”ではなかったんじゃないかと思いますよ。

自分の飲んだくれで生活が困窮してる毎日のなか、
もし自分の子供がベートーヴェンだったら、そうだと見抜けるものだろうか(笑)?と

イケる才能と思っていたのは素養があるからじゃないかな。

“ベートーヴェンの父は、我が子を虐待、児童福祉法違反の ダメ人間”的見解一色(笑)には毎度なにか疑問を感じます。
子供に練習してもらうのもさせるのも大変なことでして
そしてテノールとして大成功していたとはいえないであろうお父様は、
“養成したら誰でも絶対A田まなちゃんみたいに売れる!”(笑)とか、“磨けばみんなダイヤモンドになる”
というような感覚では生活していなかったと想像します。
成功しない恐れを知っていたはずですから
“いけてない”と思ってたら、靴磨きのお手伝いとかごみひろいとかのアルバイトにばかり行かせた方が取り急ぎ日銭の足しになったはずです。


私利私欲だけでスパルタ教育、できるものじゃない……と
わたくしは思うというか、思いたい。
ベートーヴェンにお会いしてみたいものだと思うと同時に

ベートーヴェンの伝記ものでは大抵ろくな云われ方をされてないテノールのお父様の歌と歌声を

私はすごくすごく、聞いてみたいのでした。