ブラック・アリとキリギリスその3

2011.07.20 23:22:36

しばらくたつと、キリギリスがアリの街で死んだことがすこしづつ虫の世界で噂になるようになってきた。
アリはあわてて
『アリとキリギリス』
という、全くの創作小説をアリ族のノンフィクション歴史ノベルズとして発表することにした。
かのフィクション製作について、アリ町は文豪のフンコロガシに大枚の金を積んだので、後年ディズニーも借用するまでの立派なストーリーにしあがった。それがいわゆる『アリとキリギリス』であるっ!!

実際はキリギリスにたいしてギャラを不払いなことを隠し、
“貧しくお調子者のキリギリスに冬の間餌をやって、
あたたかい部屋にいれてやった”ような話しが完成したのはこのようないきさつなのである。


アリの作る物語の中では、
アリは
・虫の世界全体の勤労者としての模範であり、
・同じ勤労者をいたわる善き存在で
・虫道に反してはならない、
とされているのだから、
キリギリスを自分等にサービスを提供した勤労者として少しも見なさかったこと、
謝礼を払わなかったこと
・キリギリスなんて冬に死んで当たり前と無慈悲で情操の欠けた教育を子供にほどこししている

なんてことがあからさまに知れたらイメージダウンになるのだ。
それは街益にならないことであることを、アリは十分に知っていた。

事実は隠蔽するしかなかったのだ。

ノンフィクションを語る創作小説(フンコロガシ作)の
『アリとキリギリス』を必死に喧伝した効果で
芸術に理解のある街、弱者を救済する街として今ではすっかり有名になってきたアリの街。

さらにそれを印象づけるため、アリ街は
来年名ヴァイオリニストのギトリスをリサイタルに呼ぶことを決定して発表した。
キリギリスに払わなかった6ヶ月ぶんのギャラのさらに五十倍にあたるギャランティを用意して。



そして翌年、アリはギトリスを聞いた後こう言った


『やはり本物はすばらしいですな~。』


芸術に理解のある街とされているアリ街に、今年も何も知らない別のキリギリスがやってくるかもしれない。
アリ以外は冬をこせない街であることを知らずに。




☆おしまい☆

この作品はフンコロガシ(笑)ではなく私が勢いで作成したものです。
キリギリスには全く救いがないパターンになっちゃったよね~(ToT)?

アリがすごくドライだった場合(笑)の
『ブラック・アリとキリギリス』
は三夜連続特集擬人化ドラマ(主演キリギリスジャニーズ)でNHKハイビジョン(語り手檀ふみ)で放送される予定は……


ないよっ!!