ブラック・アリとキリギリスその2

2011.07.20 10:38:03

続き。

アリに約束したはずの給料をもらえなかったので、宿を借りれなくなり、6ヶ月間無償で働いたキリギリスにはたくわえがなくなっていた。
寒さに弱いキリギリスは冬になるまえ、秋の中頃には死んでしまったが、

アリたちは

『遊んで暮らしてきたキリギリスだから

自業自得なんだからほっておけ』

と言って墓もつくらなかった。

街の外れに捨て置かれたキリギリスの屍を指差し、
『道楽にふけるとこうなるんだから、ちゃんと働くのが一番まっとうなんだよ』
とアリはアリの子供に教えた。

そういう躾を受けたアリの子供は、
『ヴァイオリンはちゃんと働いてないのだ』と思い込んでそのまま大人になるので、
アリ族にはここ二万世代にわたり、ヴァイオリニストが一匹もいない。

翌年アリは、各種アリのイベントで
死んだキリギリスの演奏を録音したものを流用していた。

アリは
『別に生じゃなくてもそこそこの音がかかってりゃけっこう雰囲気いいんだよな~。けっこう便利だよこの録音。ギトリスじゃあいちいちCD買うと高いからな~。キリギリスは金かからないし、けっこう便利だったな。死人に口なしだから著作権気にしなくていいしな~』
とか言って、キリギリスが死んだことはさして気にしなかったようだ。
自分の都合がよければ他族はどうでもよいのがアリ族伝統の思想なのである。体が黒いと腹まで黒いのだろうか(笑)。


次号に続く!!