空から見えるもの

2008.11.21 14:45:22

羽田空港を離陸した時、富士山はどこだろうと探したがなかなか見つからなかった。
頭を東西南北の地図に置き換えて窓の外をじっと見つめた、初めて飛行機に乗った時、こんな風に覗いていたなと思いながら。

100Mほど上空から後ろを見ると今搭乗したばかりの52番ゲートと共に空港ビル全体が10cmぐらいの感覚の中に納まった、端から端まで歩けば20分以上は掛かるだろうなと思いながら。

私の座席からは海側しか見えない。遠く千葉方面の海岸線が見えたところで左に旋回し始めた。東京デイズにーランド上空、高度はまだ1000Mに達していない。
アトラクションの様子もくっきり見える、今乗ってきた山手線、約1時間かかって羽田空港にやってきたが、両手で輪を描いた中にすっぽり納まった。遠くに見える富士山の頂上はまだだいぶ上にあった。富士山との距離は120キロ離れていた。

筑波上空辺りで富士山の高さを超えた、かろうじて窓の後方ギリギリで見えたのが最後だった。この辺りで眼下の眺め以外、かなりアバウトな景色に変わった、もう5000M以上登ったのだろうか、日光の中禅寺湖が2cmぐらいに見え、男体山(2486m)が正面下に見えてきた。
前日に行ってきた伊香保方面の山々も尾瀬沼辺りの方向も窓に映し出された。
学生時代、日光から戦場ヶ原、白根山(2578m)の金精峠を越えて老神温泉まで、まる一日のドライブ行程が目の動きだけで見渡せた。
新潟方面は雪ぐもが垂れ下がり谷川岳(1974m)でしっかりと雪国を分けているのが見えた。

那須高原・白河の関を過ぎると、遠くの大日岳(2128m)・飯豊山(2105m)だろう、かなり冬山の雪が1Mは積もっていると思われる稜線がくっきりとした頂上に変わってきた。
そして会津若松・猪苗代湖は雪で輪郭がぼやけ、やがて東北はすっかり見えなくなってしまった。

人間は不思議な動物だな・・・と思った。
地上では誰もが、目の前の距離と時間で思考も感情も動いている。
それが、山登りなどで100mごとに視界が広がるたびに視点・観点を変えられるのだ。
ましてや10000m上空では、まるで働きアリを眺めるように、「みんな頑張って生きているんだ」、「こんなところにまで人が住んでいる、それぞれに人生があるんだ」と感心していた。
ステージが変わるたびに、優しくなれる自分も感じた。

宇宙飛行士が言った言葉を思い出す、「地球はかけがえのない蒼い星だった」と。
私も「きっと神や仏になれるかもしれない」と疑似体験をしたような気がした。