プロフェッサー木部勢至朗

2009.03.18 17:49:30

宇宙航空研究開発機構経営企画部で現在タイの大学院に出向中の木部勢至朗博士がスリランカとネパールの研究者を連れて游北眠にやってきて、一気にアカデミックなお店に様変わりした。
北大の大学院と留学生の交換及び共同研究の話し合いで訪れたとのことだ。

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左から2人目スリランカ人教授3番目ネパール人教授5番目木部博士

彼の研究は前にも書いたことがある「宇宙デブリ(ゴミ)」の一人者だ!
彼のレポートを載せておこう。

『世界初の人工衛星「スプートニク一号」からこれまで世界中でおおよそ4000回の打ち上げが行われ、人類が宇宙に打ち上げた人工物体の総量は数千トンにも及んでいる。
―――人間が活動する所には、ゴミが発生するという必然は、地上でも宇宙でも同じである。最新科学技術の粋を集めて開発された人工衛星であっても、寿命というものがある。これまで打ち上げられた衛星のほとんどの全部がその段階で宇宙にそのまま放置されてきている。
――――衛星のガスタンク、バッテリーなどの爆発も含めると、今まで200回近い爆発事故が軌道上で発生しているのである。その度に無数の破片が宇宙空間にばらまかれてあり、数のうえからは宇宙ゴミの一番の発生原因となっている。
 このように発生した小さなゴミであっても、その破壊力は馬鹿にはできない。宇宙ゴミの平均衝突速度は毎秒10kmと考えられており、これはピストルの弾が秒速数百m、戦艦に搭載された大砲でやっと秒速2km程度であることを考えると、べらぼうなスピードである。そのためわずか直径3mmのアルミのスペースデブリの衝突でもエネルギー的にはボーリングのボールが実に時速100kmで衝突するのと同じ運動エネルギーをもっていることになるのである。
――――たいがいのものは貫通してしまう(因みに、現在建設中の国際宇宙ステーションには、特殊な防護構造によって、1cm以下のデブリ(宇宙ゴミ)の衝突に耐えることが出来るよう設計してある)
 という訳で地球の周りは危険な人工物体のゴミ溜りと化し、現在地上からの観測でどこをどう飛んでいるか分かっている10cm以上の大きさのものだけでも、8900個、その他爆発などで発生したより小さなmmサイズのものまで含めると3500万個程度存在すると考えられている』

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木部博士
現在は宇宙から地球の資源や農作物の作柄の観測精度の研究と言うことだ。
ひとつ気になる話が面白かった、愛媛大学で10年以上日本にいたスリランカの研究員の言葉だ!
「後進国の森林伐採や大気汚染を抑止する効果のある地球温暖化の問題は、科学者の中では半分半分の意見に別れているとのことだ、地球はそんなに柔じゃない、と言う意見だ!ただ環境に良いとの理由で激しい言い争いは避けているらしいよ」と言うのだ。
排出権取引とか、環境対策自動車とか、産業にとっては地球温暖化対策でもう走っている。あくまでも結果は神のみぞ知ることなので、経済を優先しようと言うことらしい。

彼は新潟の三条高校出身で高校1年生の夏休みに東京で出会って以来の付き合いだ!
大学時代、大学院、宇宙研究所時代と仕事とは関係なく付き合ってきたが、今から20年前に今若田さんが搭乗している宇宙ステーションの青写真を見せてもらった時にはさすがに興奮したことを覚えている。
宇宙ステーションがデブリから守られる設計になっているのも彼の研究だし、宇宙服や限られた密閉空間での炭酸ガスの処理の研究でも一人者だ。
これからも北大に年に1度は来ると言っていた。
あと3年で定年、研究から足を洗ってタイで生活しよう、なんて言っているがそんなことにはならないだろう!
今日はいったんタイに帰国、月末にはドイツで学会と言っていた。うらやましい!