奇跡

2008.11.17 10:57:41

東京自由が丘でライブをした。
もう五年になるが、ここではちょっと変わった条件のライブをしている。
私のスケジュールの隙間でやる、目黒などで定期的にLIVEをしているのでお客は店が集め公開しない、なるべく新しいお客を開拓するなどである。

その昔、名古屋からの帰り近くで忘年会があり、時間つぶしに寄ったのが長い付き合いの始まりだった。

私が飛び込んだとき、カウンターに女性が一人泣いていた。
もともとマスターが紹介して見合い結婚、五年になるがこどもが授からない。
旦那の両親から跡継ぎを期待されていて、最近はすっかり落ち込み離婚まで考えていると話していた。

マスターからギターを持っている私に一曲プレゼントしてあげてよと頼まれた。
ホワイトクリスマス、ラブソングを歌った、もう泣き顔から笑い顔に変わっていた。
三ヶ月後、奇跡が起こった。
子供を身ごもったのだ、しかも双子。真相はあの日の夜、頑張ったそうな。
私はここでは奇跡のシンガーソングライターというふれこみだ。(笑)

そんなわけで今回も気楽にスタートした。
今週は富良野に行ってきたよ倉本聡の「優しい時間」の主題歌『明日』、十勝の夕日は最高、デビュー曲「うちのホンカン」の主題歌『ふりむけば』と二曲が終わったがそこから予定が狂いだした。

真ん前で聞いていた80歳になる老人がやたらと話しかける。
「ヤー北海道は良いねー、昭和48年に10日間小田急バスツアーで北海道に行ったときを思い出すねー」
私もその会話に気さくに乗って行く。
「あ、そうですか、札幌オリンピックの後ですね。」
ふつうはここで終わるのだが、今日は終わらなかった。
「バスガイドさんが歌ってくれたのを思い出すなー」
「何て歌ですか」
「ほれ、何とか旅情って行ったかなー」
いきなり三曲目は「知床旅情」になった。
すっかり調子に乗せてしまった。
とうとう最後まで北海道から離れられなくなり1時間が過ぎてしまった。
もちろん歌の合間はお爺さんとの掛け合いで進んだ。
「その後も何度も行ってる、冬の雪祭りも良いねー、札幌の街も綺麗だねー」
「あざみの歌」「この道」「時計台の鐘」他のお客も文句は言わなかった。

終わった後、お爺さんちょっと若め(?)の彼女と気持ちよく出て行った。
冗談なのか、「ホテルでも行くか」と豪語して!
まさかこの二人に奇跡は起こらないと思うのだが。